研究課題
(1)グレリン欠損マウスの作製と解析われわれは平成17年度に成長ホルモン分泌促進活性および摂食亢進活性をもつホルモンであるグレリンのノックアウトマウスの作製を完了した。現在ヘテロ欠損マウス、ホモ欠損マウスを得て、順調に匹数を増えており、現在、様々な表現系の解析を行っている。予備的な検討では、欠損マウスの体重、摂食量、行動に目立った変化はない。しかしながら、われわれは欠損マウスの代謝活動に異常を見いだしており、これを現在確認している。(2)NMU欠損マウスの作製と解析摂食抑制ペプチドであるNMUの生体内での役割についてはまだよくわかっていないことが多い。そこでわれわれはNMU欠損マウスを作成し、その表現系の解析を進めた。平成16年度までの研究でNMU欠損マウスは過食とエネルギー消費減少によって肥満になることを示した。またNMUとレプチンとは別々の仕組みで摂食抑制を行っていることを明らかにした。さらに平成17年度になって、NMU欠損マウスでは慢性炎症に対する反応が異常になっていることを明らかにした。NMUと炎症との関連が明らかになったきっかけは、NMU欠損マウスで慢性疼痛のモデルを作ろうと完全フロイントアジュバントを足底に皮下注射したときの観察がもとになっている。野生型マウスでは完全フロイントアジュバントによって注射部位の発赤・腫脹が起こるが、NMU欠損マウスでは全く起こらなかった。この現象にはマスト細胞が重要な役割をもっていた。完全フロイントアジュバントはマスト細胞からの脱顆粒や、局所において浮腫や好中球浸潤を起こすが、NMU欠損マウスではこのマスト細胞による反応が起こらない。NMU自体は炎症を起こす作用があり、NMUをマウスの足底部に皮下注射すると早期炎症反応が誘導され、マスト細胞からの脱顆粒、血管拡張、血漿流出が見られる。しかしこれらの反応はマスト細胞欠損のWBB6F1-W/Wvマウスでは起こらないことから、NMUによる早期炎症反応にはマスト細胞が必要である。NMU受容体1型はマスト細胞に高発現しており、NMUが直接マスト細胞に作用することによってマスト細胞内のカルシウム濃度が上昇し、脱顆粒などマスト細胞由来の炎症反応が起こると考えられる。
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