ポリコーム遺伝子産物は複合体を形成してクロマチン構造を制御し、細胞特異的な遺伝子発現パターンの維持、特に遺伝子発現の抑制状態の維持に重要な役割を果たしている。最近遺伝子欠損マウスの解析から、ポリコーム複合体が造血幹細胞の自己複製に必須な分子群であることが明らかにされた。今回申請者らは、PRC1複合体を形成するBmi-1、Mel-18、M33の遺伝子欠損マウスをそれぞれ解析し、Bmi-1が成体型造血幹細胞(CD34-Kit^+Sca-1^+Lineage marker^-:CD34-KSL)の自己複製・多能性の維持に中心的な役割を担うことを明らかにした。また、造血幹細胞(CD34-KSL)における遺伝子強制発現の系を用いた検討により、Bmi-1、Mel-18、M33、Rae28/Mph1のなかでBmi-1のみが体外で造血幹細胞の維持・増幅作用を有することを確認した。これらの知見は、Bmi-1が造血幹細胞の体外増幅における有望な標的分子であることを示すものである。現在は造血幹細胞におけるPRC1複合体の制御遺伝子の同定を行うとともに、標的遺伝子の特異性がどのように決定されるのか、その機序の解明へと研究を展開した。
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