研究概要 |
1.MALTリンパ腫の病因と病態に関する遺伝子の解明と分化,増殖における役割の研究:粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫は全悪性リンパ腫の約10%を占め,節外性リンパ腫のなかでもっとも頻度が高い.我々は,MALTリンパ腫に特徴的な染色体転座t(11;18)(q21;q21)を解析し,API2-MALT1キメラ遺伝子異常を明らかにした.本年度は,蛋白レベルでの解明の第一歩として,API2-MALT1キメラ蛋白,API2蛋白,MALT1蛋白の細胞内分布に細胞内分布を規定する領域を検討した.その結果,API2-MALT1ならびにMALT1は細胞質と核の間を行き来することを見出し,その責任領域であるNES(Nuclear Exporting Signal)が存在することを発見した.従来考えられていた,API2-MALT1およびMALT1は単に細胞質において機能しているのではなく,核内においても何らかの機能を有していることを世界で始めて明らかにした. 2.びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の病因と病態に関する遺伝子の解明と分化,増殖における役割の研究:びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は全悪性リンパ腫の30〜40%を占めるもっとも頻度の高いリンパ腫であるが,その中には複数の疾患単位が含まれる.我々は,DLBCLについて,発現解析による分類(GCB typeとABC type)とArray CGHにより得られたゲノムプロファイルを検討し,それぞれのsubtypeに特徴的なゲノム異常が認められることを明らかにした.マントル細胞リンパ腫についても同様に検討し,病型特徴的なゲノム異常が存在することを明らかにした.また,2q13ホモ欠失領域からその責任遺伝子が,BCL2の機能に拮抗するBIM1であることを始めて見出した.
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