研究概要 |
目的:関節軟骨組織のホメオスタシスは同化促進因子と異化促進因子のバランスの上に成立している。関節リウマチ(RA)ではさまざまな要因により、このバランスが崩れて軟骨組織の異化が促進される結果、軟骨組織の変性と軟骨細胞死がもたらされる。本研究では画期的な3次元培養方法であるAlginate-Recovered-Chondrocyte法(ARC法)によって作成されたARC軟骨組織を用いて、RAにおける軟骨の保護・再生療法の開発のための基礎的検討を実施した。方法:ARC軟骨組織への遺伝子導入にはアデノウイルスベクター(Adv)を用いた。Proteoglycan(PG)合成能および分解能の評価には^<35>Sulfateによるラベリングとalcian blue迅速フィルターアッセイを用いた。PG定量にはdimethylmethylene blue(DMMB) dye binding method(DMMB法)を用いた。Bone morphogenic protein-7(BMP-7)、matrix metalloproteinase-3(MMP-3)の測定にはELISA法を用いた。結果:ARC軟骨組織における効率的な目的遺伝子発現がAdvにより可能となった。BMP-7発現Adv(Adv/BMP-7)はARC軟骨組織のPG合成、PG含量を増加させた。IL-1βはARC軟骨組織のPG分解とPG放出を促進し、MMP-3産生を増加させたが、Adv/BMP-7はこれらのIL-1βの異化促進作用を抑制した。結論:AdvはARC軟骨組織への遺伝子導入に有用であり、Adv/BMP-7はIL-1刺激ARC軟骨組織に対して軟骨保護作用を示した。これらの結果は、関節炎局所でのBMP-7遺伝子の導入あるいは発現誘導戦略が、in vivoにおける軟骨保護・再生につながる可能性を示唆している。(海外共同研究者:Koichi Masuda, Rush Medical College)
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