研究概要 |
I型アレルギー疾患において発症のキーとなるIgE産生は,活性化T細胞が分泌するサイトカイン群によって制御されている.アレルギーの治療的,予防的な制御を行うためには,IgEの産生を抑制するメカニズムを理解し,その機構を応用する必要があると考えられる.最近in vitroにおいては,IL-21がIgE産生を抑制する因子であることが示唆されたが,IL-21がin vivoにおいてもIgE抑制能があるのか,さらにI型アレルギーの発症と病態発現の制御に有効であるか否かについては,これまで報告されていない.そこで本研究は,IL-21のin vivoにおけるIgE産生抑制機構について検討するとともに、I型アレルギーに対する治療および予防の可能性についてモデル動物を用いた検証をおこなうものである. 本年度は、以下の検討を行なった。(1)rIL-21の作成:バキュロウイルスの系を用いてrIL-21を作成、純化する系を確立した。(2)遺伝子導入:naked DNA法にてIL-21発現ベクターをマウスに導入し、in vivoにてIL-21の生理活性が得られることを確認した。(3)アレルギーモデル動物におけるIL-21分子制御:(1)アナフィラキシーのモデルとして、ピーナツアレルギーマウスを作成し、感作前または後に上記(2)の方法でIL-21遺伝子をin vivo導入した。予防的投与によってアナフィラキシーが顕著に抑制できることが分かった。またこの予防群ではIgEが有意に低下していた。治療的投与ではこの系では明らかな効果は得られなかった。(2)鼻アレルギーモデルとして、OVA誘発鼻アレルギーマウスを作成した。上記rIL-21の鼻内投与、または遺伝子導入を行ったところ、いずれの方法でもアレルギー症状が著明に抑制でき、さらにプレリミナリーな検討では、予防的のみならず治療的投与でも効果があることが示唆された。次年度は分子制御の方略を量的、時間的にさらに検討するとともに、免疫学的、分子生物学的により詳細な解析を加える予定である。
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