研究概要 |
1.GFPマウスを用いた骨髄幹細胞移植の検討:Alport症候群のモデルマウスであるCol4a4ノックアウトマウスでは、正常コントロールマウスに比べて、骨髄幹細胞を骨髄移植すると、腎糸球体細胞に分化する頻度がどの程度高まるのかを検討した。Col4a4ノックアウトマウスでは、移植期間が4週齢から12週齢および、8週齢から12週齢の群で、約10%、野生型マウスに移植した場合と比べ、腎糸球体細胞に分化する頻度が高まることが明らかになった。なお、この骨髄移植により、基底膜領域(GBM)にIV型コラーゲンα3,4,5鎖の発現は抗体染色で認められなかった。 2.IV型コラーゲンα3,4,5鎖を強制発現するトランスジェニックマウスの作成・IV型コラーゲン鎖を産生・分泌する骨髄幹細胞を骨髄移植する。:内皮あるいはメサンギュウムから基底膜領域(GBM)に三量体が移行し、網目構造を構成することも考え、IV型コラーゲンα3,4,5鎖ともに強制発現する骨髄幹細胞を得るためにトランスジェニックマウスの作成をおこなった。作成したトランスジェニックマウスの骨髄をCol4a4ノックアウトマウスに移植したが、GBMにはIV型コラーゲンα3,4,5の3量体は認められなかった。 3.研究の総括:骨髄幹細胞が糸球体上皮細胞に分化できなかったことから考えると、上皮細胞がGBMでのIV型コラーゲンのネットワーク形成になんらかの役割を持っており、上皮細胞以外の細胞で産生されたIV型コラーゲンの3量体はネットワークを形成できず、排出されてしまう可能性が考えられる。また、Alport症候群の傷害糸球体においても糸球体構成細胞に分化した細胞の寄与率は依然として低いことも否定できない。今後の課題として、寄与率を高めるために、主として、糸球体構成細胞への分化に関与している間葉系幹細胞の割合を増やして移植することなども検討する必要がある。
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