研究概要 |
Mannerの方法によりproepicardial organ(PEO)移植ウズラ-ニワトリキメラ胚を作製し、心臓でのウズラPEO細胞の分布図を作製した。フ卵5日目にウズラPEO細胞による心外膜形成と心外膜下での上皮間葉転換が認められた。ウズラPEO細胞は、フ卵6日目には心筋層内に、フ卵9日目には大動脈への冠動脈開口部に位置していることが示された。この時期に一致したマウス胚において細胞遊走を促進する接着分子の1つtenascin-Cの発現をみると、PEOに強い発現が見られたものの、PEO細胞が心臓表面および筋層内へ分布する際には発現が抑制されていた。心外膜下での上皮間葉転換に際しては発現が見られた。マウスPEO細胞を培養すると管腔構造を形成し脈管に分化した。形成された脈管よりRNAを採取し、RT-PCRにより解析を行った結果、bFGF, HGF, VEGF, Flt-1, Flk-1, Ang-1, Ang-2, Tie-2といった種々の血管成長因子が発現していたが、培養液中に低濃度のbis-diamineを添加したところ、PEO細胞は成長せず、管腔構造も形成されなかった。また、培養PEOからRNAを採取し解析を行った結果、これらすべての成長因子の発現は減弱していた。ラットでは、胎生14.5日に心外膜と心筋との間にvascular plexusが形成され、胎生15.5日には心筋内に管腔様構造がみられたが、胎生10.5日にbis-diamineを投与したラット胚ではvascular plexusの形成は粗で管腔様構造はみられず、血管成長因子の発現が遅れていた。 以上より、bis-diamineはPEOの正常な成長を遅らせると同時に、PEOが血管内皮、血管構造を形成するのに重要な成長因子の発現を障害し、PEO由来細胞の上皮間葉転換を阻害することで冠動脈発生の異常をきたすことが示唆された。
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