研究概要 |
ライソゾーム病の多くはライソゾーム内の糖脂質加水分解酵素の欠損によっておこる、Suzukiらは、Fabry病の変異酵素αガラクトシダーゼが、ガラクトースおよびその類似体によって活性化されることを見いだした。このことはある種の変異を持つ酵素蛋白質は、酵素蛋白質が合成される中性の環境である小胞体やゴルジ装置で極めて不安定で、酸性の環境であるライソゾームに運ばれるまでに分解されてしまう可能性を示し、ガラクトース類似体を用いると、酵素と結合し中性の環境で分解される酵素蛋白質を安定化し、酸性のオルガネラであるライソゾームに運ばれる可能性を示している。Suzukiらはこの理論を分子シャペロン療法と命名している。この理論に基づきグルコース類似体によるゴーシェ病の変異酵素βグルコシダーゼの活性化による治療法の樹立を目的とする。 昨年までに、ゴーシェ病の変異酵素のうち、F213I変異を活性化するグルコース類似体N-octyl-valienamime(NOV)を見出し、この類似体は変異F213I酵素のリソゾーム内濃度を高め、酵素活性を上昇させることを明らかにした【論文発表(4)Lin H, et al., Biochem Biophys Acta 2004】。NOV類似の阻害剤13種類を合成し、F213Iの活性を上昇させる阻害剤をスクリーニングしたが、NOV以上に活性を上昇させる阻害剤は見いだせなかった。またゴーシェ病患者細胞をスクリーニングし、NOVで活性が上昇する変異のスクリーニングを行い、N188S/G193Wを持つ患者細胞の活性が4倍に上昇することを見いだした。βグルコシダーゼノックアウトマウスは致死的であるが、このマウスにF213I変異を導入したマウスの作成の準備を行い、マウスでの治療実験の準備をしている。
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