研究概要 |
神経変性疾患の新しい治療法の開発を目的として、変異酵素を活性化する分子シャペロン療法の開発を目指し、ゴーシェ病の原因酵素βグルコシダーゼを活性化するグルコース類似体N-octyl-valienamine(NOV)を見出した。NOVを培地に添加することによって、F2131変異の酵素蛋白量と活性が上昇し、酵素蛋白の局在が小胞体からライソゾームに移行し、グルコセレブロシッドのクリアランスが改善することを明らかにした【Lin H, et al.,Biochem Biophys Acta 2004】。NOVは進行性ミオクローヌスてんかんを示すN188S/G193Wを持つ患者細胞の活性が4倍に上昇することを見いだした。N188S変異を持つ日本人患者は3例あったが、培養線維芽細胞はなく、リンパ芽球での確認は出来なかった。そこで、N188SおよびG193W変異をFlag標識したpGCCIベクターに組み込み、COSへ導入後、抗Flag抗体で免疫沈降した酵素蛋白を抽出し、NOV存在下での活性をみたところ、N188S変異が活性化されることを明らかにした。これらの結果から動物個体での有効性の検討が緊急の課題となった。この目的のため米国ジャクソン研究所からβグルコシダーゼノックアウトマウス(β-GluKO)を購入した。このマウスのホモは48時間で死亡する。F213I変異を持つβグルコシダーゼを導入したトランスゲニックマウスを作成し、β-GluKOマウスにF213I変異を持つマウスを作成することを課題として、F213I変異をpGCCIベクターに組み込み、COS細胞での発現を検討し、β-GluKO w/human F213Iβ-Gluマウスの作成を準備している。 また、ニーマン・ピック病C型については、患者細胞がIL-6やIL-8などのサイトカインを放出し、サイトカインがSTAT系のシグナルを亢進させていることを見出した。このサイトカイン放出が神経変性と関係している可能性を考え、ニーマン・ピックC型マウスにIL-6欠損を導入した。この結果マウスの生存が1週間伸び、神経変性にIL-6が関係していることを明らかにし、抗炎症剤による治療の可能性があると考えた。この背景に、細菌内毒素受容体であるToll-4がニーマン・ピック病マウスで増加していることを見出し、Toll-4のシグナル活性化が原因と考え、ニーマン・ピックC型マウスにToll-4の欠損を導入したが生存の延長はなかった。
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