研究課題/領域番号 |
16390303
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
田中 弘之 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (80231413)
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研究分担者 |
二宮 伸介 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (10325110)
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キーワード | FGFR3 / 軟骨無形成症 / 副甲状腺ホルモン / BiP / HMGB1 / TDII / 変異 / 骨伸長 |
研究概要 |
現在まで明らかとなってきた軟骨無形成症におけるシグナル伝達異常の中で、薬物治療に臨床応用できる最有力候補である副甲状腺ホルモンの効果を 軟骨無形成症モデルマウスであるCOLIIのプロモーター下に軟骨無形成症変異FGFR3を発現させたトランスジェニックマウスを用いて検討した。リコンビナントPTH100μg/kgを生後1週より3週間隔日投与を行ったところ、全ての長管骨で骨伸長の増加が観察され、マウスの体重も野生型と有意差なく増加した。高カルシウム血症は認めず、Tibiaにおいては19mmと骨長においても野生型と差を認めなかった。組織学的には成長軟骨板の拡大は見られず、有意な骨成熟の抑制は観察されなかった。以上より、PTHは軟骨無形成症における成長障害を原因論的に治療できる可能性があると結論付けた。現在、PTHの適量の探索、組織学的変化の詳細について検討を加えている。一方一昨年より変異FGFR3によって惹起される異常シグナル伝達の詳細を明らかにするためプロテオミクスの系を用い、変異FGFR3特異的に結合する新たな情報伝達物質としてBiPとHMGB1を同定してきた。本年度はこれら二つの蛋白の異常情報伝達への関与について検討を加えた。(1)BiPの検討:TDII変異はBiP、KDEL-Rに強い結合をしめし、これら三者の共局在が 受容体を小胞体に留める要因となっていることが明らかとなった。(2)HMGB1(High Mobility Group B1)に関する検討:TDII型変異FGFR-3に結合したHMGB1はリジン残基、セリン残基にアセチル化を受けており、変異FGFR3からの細胞内シグナルが、HMGB1のアセチル化を促進していることが考えられた。一方、抗HMGB1抗体を用いた免疫蛍光抗体によって、野生型、TDII変異体ともに 細胞質内に蛋白の存在が確認されたが、TDII変異細胞では、核内のシグナルが全く検出されなかったのに対し、野生型では核内のシグナルが検出された。その反面 培養液中においては、TDII細胞においてのみHMGB1の存在が確認された。そこで、ATDC5細胞にHMGB1を添加したところ、軟骨分化の指標であるX型コラーゲンの発現の増加が明らかになった。 以上 本年度の研究によって、臨床応用への可能性と新たな治療的介入の可能性が明らかになった。
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