研究概要 |
1.ミトコンドリアDNAの全周シークエンス すでに病理学的検査を経てミトコンドリア病と確定しているが、通常の変異を認めない症例を中心に、100例余りのミトコンドリアDNAの全周シークエンスを行った。その結果、以下のような新たな点変異を見いだした。乳児良性型チトクロームc酸化酵素欠損症におけるグルタミン酸転移RNA内の点変異(14674変異)、非特異的なミトコンドリア病におけるロイシン転移RNA内の3243変異前後の点変異(3242変異,3244変異)、チロシン転移RNA内の点変異(9155変異)等である。また、難聴をおこす1555変異の大家系において、臨床症状の重症度が極めて異なる8例について、ミトコンドリアDNA内の他の変異の影響を考えて全周のシークエンスを行ったが、8例すべてが同一の変異であった。 2.ヘテロプラスミー/ホモプラスミーの確定 新たに見いだした病的である可能性の高い点変異は、定量的PCR法(Taq-Man法)を用いて、ヘテロプラスミー/ホモプラスミーを峻別した。具体的には、14674変異、3244変異、9155変異はヘテロプラスミーであり、3242はホモプラスミーであった。 3.樹立されている培養細胞での分子病理学的、生化学的解析 14674変異、3244変異、9155変異についてはミトコンドリアDNAを欠く細胞(ローゼロ細胞)に患者由来細胞質を融合させサイブリッドを作成した。これらを用いて生化学的機能実験を行いその病因性を証明できた。
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