研究概要 |
1.ミトコンドリアDNA全周塩基配列決定 250例余りの全周塩基配列決定を行った。乳児良性型チトクロームc酸化酵素欠損症におけるグルタミン酸転移RNA内の点変異(14674変異)、非特異的なミトコンドリア病におけるロイシン転移RNA内の3243変異前後の点変異(3242,3244変異)、チロシン転移RNA内の点変異(9155変異)、視神経萎縮にジストニアを合併している症例での14459変異などの病因的変異、及び、病因の可能性のある新しい変異として、617、8296、12129、14729変異などのtRNA領域の変異、3481、5698、6890、7444、8114、9035、9801変異などのタンパクコード領域の変異を見いだした。 2.樹立されている培養細胞での分子病理学的、生化学的解析 14674、3244、9155変異についてはミトコンドリアDNAを欠く細胞(ローゼロ細胞)に患者由来細胞質を融合させサイブリッドを作成し、生化学的機能実験を行いその病因性を証明した。 3. 3243変異を含むtRNA-Leu(UUR)領域の点変異とアンチコドン修飾異常 ミトコンドリアDNAのtRNA-Leu(UUR)領域において、3243や3271変異などのMELAS関連点変異のある場合はアンチコドン修飾異常が存在し、MELASではない場合はその修飾異常がないことを見いだし報告した。 4.ゲルマニウム投与によるミトコンドリア病モルモットの作製 0.5%のゲルマニウムを含む飼料を与えることでモルモットに難聴が生じ、病理学的検索で、血管条の変化、コルチ器の支持細胞のミトコンドリアに封入体を認め、ミトコンドリア異常がその本態であることが判明した。 5.ミトコンドリアDNA単一欠失例の臨床症例の報告 ミトコンドリアDNA欠失例136例について、欠失の種類と頻度、臨床病型、発症年齢について検討した。欠失が長いこと、COXサブユニットを含む変異であること、発症年齢が全身性の病態であるKearns-Sayre症候群のリスクファクターであることが判明した。
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