遺伝性対側性色素異常症は手背、足背に半米粒大の白斑と色素斑が混在する優性遺伝性疾患で、1910年に遠山により初めて報告された。本症の白斑部ではメラノサイトのメラニン生成の低下が、色素斑部ではメラノサイトでのメラニン生成の高進が確認されている。ところで本症は、二重鎖RNA特異的アデノシン脱アミノ化酵素(DSRAD)遺伝子の変異によって発症することを、2003年に我々は明らかにした。この酵素はRNAの二重鎖部分にあるアデノシンをイノシンに変える結果、その部分のmRNAの遺伝暗号を変更したり、mRNAのスプライスサイトを変える、いわゆるRNA edittingに関与する。この酵素活性の低下がなぜ手背、足背に限局してしかも、メラニン生成の低下と高進という相反する皮疹を生ずるのか、その機構を明らかにするのが本研究の目的である。そこでまずDSRAD酵素の基質となるmRNAを明らかにすることにした。 正常ヒトメラノサイトにDSRADのsmall RNAを導入し、それにより増加するmRNAをDNAチップを用いて検討した。つまりDSRAD mRNAのsmall RNAを導入された細胞ではDSRAD mRNAの活性が低下し、そしてDSRADの酵素合成が減少し、結果的にこの酵素量が減少する。するとこの酵素の修飾を受けていたmRNAの活性量が増加することになる。この増加したmRNAを突き止めることにより、DSHの病態を解き明かそうというものである。培養正常メラノサイトDSRAD mRNAのSiRNA遺伝子導入し、DNAチップを用いて増加したmRNAを網羅的に比較検討した結果、約10数種のmRNAが有意に上昇した。現在これらのmRNAについて詳細な検討を進めている。
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