1)侵襲性皮膚バリアー除去法開発 黄色ブドウ球菌由来毒素の一つであるexfoliative toxin (EFT)を種々の濃度で含有する溶液(ローション)あるいは軟膏を作成し、これを用いてマウス皮膚を種々の条件で処理することによる表皮上層デスモゾームの破壊を試みた。その結果、100μg/mlのEFTローション外用24時間で、表皮顆粒層、角層の剥奪が可能であることが組織学的に明らかとなった。また、ケミカルピーリングの技術を生体皮膚への遺伝子導入のための前処置として応用するための条件を検討した。マウス皮膚を、種々の濃度のグリコール酸で処理し、角質層および顆粒層を選択的に除去する条件を検討した。その結果、50%グリコール酸溶液塗布10分で、角質および顆粒層の変性、除去が可能であることが確認された。 2)生体表皮細胞への直接遺伝子導入技術開発 超音波エネルギーによる生体皮膚遺伝子導入条件の最適化を試みた。ルシフェラーゼ遺伝子、βガラクトシダーゼ遺伝子、およびGFP遺伝子を発現するプラスミドDNA溶液内にマウスおよびラット皮膚を浸し、種々の条件で超音波を照射した後に一定面積皮膚を生検後、ルシフェラーゼ活性を測定して遺伝子導入効率を検討した。導入遺伝子の局在については、生検皮膚を用いたβガラクトシダーゼ染色、あるいはGFP蛍光を指標に検討した。 ルシフェラーゼ活性で検討した遺伝子導入高率は、超音波無しでは殆ど0%、超音波単独でも殆ど酵素活性は得られなかった(〜数十RLU/mg蛋白)。しかしEFTを用いたバリアー除去後にはおよそ10^3〜10^4RLU/mg蛋白、ケミカルピーリング後には10^4〜10^5RLU/mg蛋白の酵素活性を検出出来た。また、GFPあるいはβガラクトシダーゼ遺伝子を用いた導入遺伝子局在検討の結果、本システムでは表皮内に限定した遺伝子導入が観察された。
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