生体皮膚への低浸襲・高効率遺伝子導入法を開発し、栄養障害型表皮水庖症の遺伝子治療へと応用研究を進めた。 1)黄色ブドウ球菌由来毒素exfoliative toxin A(EFTA)含有ローション塗布により、マウス表皮の顆粒層、角層に発現するデスモゾームカドヘリンdesmoglein 1(Dsg1)を特異的に破壊し、表皮上層を低浸襲性に剥離できることを明らかにした。次いで、EFTA含有ローションにFITC蛍光ラベルした二本鎖オリゴDNAを溶解し、これをマウス背部皮膚に塗布した後、経時的に皮膚を採取してFITC標識オリゴDNAの導入を組織学的に検討した。その結果、塗布24時間後に真皮上層から深層にかけてFITCによる著明な緑色蛍光が確認された。本技術開発により、生体皮膚に対する低浸襲性核酸医薬導入が可能になった。 2)VII型コラーゲンノックアウトマウス皮膚水庖内にVII型コラーゲン遺伝子発現プラスミドベクターを直接投与することにより、水庖蓋および水庖底のケラチノサイトにプラスミドDNAを導入し、遺伝子発現を誘導して基底膜領域に欠損していたVII型コラーゲンの分布を回復することに成功した。この方法を応用することにより、極めて低浸襲製に栄養障害型表皮水庖症患者の遺伝子治療が可能になると期待できる。 3)センダイウイルス(HVJ)の外殻のみを利用して融合により遺伝子導入可能なHVJ-Eベクターの融合タンパク(F)の一部を表皮基底細胞特異的カドヘリンDsg3に対する単鎖抗体(Dsg3-scFv)との融合タンパクに組み換えた。このDsg3-scFv-F-HVJ-EにVII型コラーゲン遺伝子発現プラスミドDNAを封入してVII型コラーゲンノックアウトマウス水庖内に投与することにより、極めて効率的に基底膜領域にVII型コラーゲンを供給することに成功した。
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