研究課題
昨年度までに、癌抑制遺伝子p16^<Ink4a>遺伝子の発現をマウスの生体内でリアルタイムに可視化するために、完全な遺伝子発現ユニットを含む長大なgenomic DNA(p16^<Ink4a>の遺伝子座を含むbacterial artificial chromosome clone : BAC cloneを利用)を用い、目的遺伝子のコード領域の3'末端にホタルの発光酵素であるルシフェラーゼ遺伝子を、相同組み替えの技法を用いてインフレームで挿入し、本来の遺伝子構造を保ったままそのp16^<Ink4a>遺伝子の発現を生物発光を利用して可視化定量できるトランスジェニックマウスを作製した。マウスの腹腔内にルシフェリンを投与し、高感度CCDカメラにてマウスからの発光を観察したところ、マウスからの発光と内在性p16^<Ink4a>遺伝子の発現がよく相関することが確認された。ヒトやマウスにおいては、p16^<Ink4a>遺伝子は発癌ストレスに反応して、発癌防御反応としてその発現が上昇することが知られている。そこでこのマウスを用いて、昨年度から今年度にかけて、DMBA-TPAプロトコールによる皮膚化学発癌誘導実験を行った。DMBA-TPAにより良性のパピローマが形成されるが、p16^<Ink4a>遺伝子の発現はパピローマが形成されてしばらくしてからその発現が誘導され、p16^<Ink4a>遺伝子が発現すると、パピローマの発育が抑えられることが確認された。以上の結果から、p16^<Ink4a>遺伝子は発癌ストレスにより発癌防御反応として、その発現が誘導され、良性腫瘍から悪性腫瘍への進行を抑制していると考えられた。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
Nature Cell Biology 8
ページ: 1291-1297
British Journal of Dermatology 155
ページ: 999-1005