研究概要 |
我々は過去数年間、わが国では数少ない自閉症の研究機関としてチームを組み自閉症遺伝子解明の共同研究を進めてきた。本研究はこれを包括的に発展させ、自閉症を中心とする広汎性発達障害の疾患感受性遺伝子同定を目的としたものである。 H17年度は全ゲノム連鎖解析のメタ解析でも最も強く示唆される7番染色体長腕領域に重点を置き、2番長腕など他の領域についても解析を行った。また今年度の段階では、自閉症を中心に解析した。 7番長腕領域ではTAC1,LAMB1,NRCAM,FOXP2,PTPRZ1等20余りの遺伝子を解析。FOXP2,PTPRZ1では結果は有意でなかったが、残りの一部では自閉症との関連を示唆するデータが得られている。解析はSNPを用いた相関解析を主としているが、特に注目される領域はsequenceで新たなmutation検索を行っている。7番同様PDDとの連鎖を示唆される2番長腕領域(2q31-33I)については、山本らがdatabase searchにより、原因候補遺伝子(CACNB4、3-Fet、SCN2A、SCN1Aなど)を抽出、SNP、マイクロサテライト等を検出して解析可能な条件を検討した。 また灘波らは、初期脳形成に重要な役割を果たすHOXAとHOXD遺伝子群でアミノ酸リピート配列に注目して研究を進め、アラニンやセリン、プロリン、グルタミン酸が7個以上のリピート配列13箇所を検討した。うち一つのアラニンリピートでは、自閉症家系の数例に限ったリピート長多型を見出し、機能解析を含めて検討中である。また脳のdifferentially methylated region (DMR)の解析を2番染色体の30遺伝子、7番染色体の32遺伝子で検討し、2番、7番ともに、11個のヘミメチル化領域を見出した。現在リンパ芽球を用い、この領域のメチル化が自閉症に特異的かどうか検討中である。
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