研究概要 |
本研究は、わが国では数少ない自閉症の研究機関がチームを組み、自閉症を代表とする広汎性発達障害(PDD)の疾患感受性遺伝子群探索のため、対象のリクルートと候補遺伝子の解析を進めた。対象リクルートに関しては、三重県、愛知県の地域療育機関ならびに、東京大学医学部附属病院「こころの発達診療部」と連携して、当事者・家族の協力のもとにリクルートを進め、平成18年度末の段階で、家系サンプル240例を含む300例以上のPDDサンプルの収集を終えている。これらを用いて2番、7番および1番染色体(Angelman症候群領城とGABA受容体群)の各長腕領域の候補遺伝子を中心に、北里大学と解析領域を分担して行った。7番染色体長腕上ではTAC1,NPTX2,RELN, LAMB1,LAMB4,NRCAMS-SCAM, FOXP2,PTPRZ1,WNT2,NPTX2などの解析を行い、この一部でPDDとの関連が強く示唆された。鳥取大学では、三塩基繰り返し配列の影響に注目し、脆弱X症候群のFMR遺伝子における繰り返し多型の影響を検討したが、一般の自閉症では関連は認めなかった。一方HOXA1遺伝子のヒスチジン繰り返し部分で、自閉症サンプルで新たな繰り返し多型を発見、結果的に自閉症との関連は否定的であったが、細胞機能障害を通じて神経分化に対する何らかの異常を引き起こす可能性が示唆された。この他に、レット症候群におけるMECP2遺伝子のアリル特異的発現の検討、Neuroligin関連遺伝子のエクソン部分PDDサンプルにおける変異探索等を行った。後者では、現在までのところ変異は見出されていない。
|