研究課題
診断基準に基づき統合失調症(Sz)と診断される者のうち、純粋に遺伝的に規定されるのは約50%とされる。Szの生物学的基盤は、遺伝的に規定されるものと、環境要因によってもたされるものとがあり、両者は必ずしも完全に一致しているとは限らない。我々は、in vivoで神経化学物質の定量が可能な^1H-MRSの技法に直目した。この技法は、脳の特定領域の細胞レベルでの障害有無の特定が可能であり、遺伝的に規定された表現型の発見につながる。Sz罹患者は、すでに治療的薬物に暴露されており、純粋に遺伝的表現型を探るために、薬物の影響がなく将来発症の危険が高いhigh risk群を研究の対象とした。両親もしくは片親にこの疾患を有するoffspringである。関心領域(VOI)は、Szの病態との関連がしばしば指摘されている海馬(2×2×2cm^3)とした。LCModel(ver.,6.1)を用い、N-acethylaspartate(NAA)、choline(Cho)、及びcreatinine+Phosphocreatine(Cr+PCr)の絶対値を算出した。年齢・性を一致させた健常対照群に比較し、high risk群にはMRS指標のいかなる指標においても、有意な差は見出されなかった。他方同時に、言語発達の遅延を認め、Szと類似の社会性の障害を呈する、広汎性発達障害である自閉症にMRSを施行したが、自閉症者では、有意なCho値(p=0.01)及びCr+PCr値(p=0.02)の増加を認めた。Szに比較し、自閉症はより遺伝的関与が高いとされる。海馬におけるMRS上の異常所見は、寧ろ自閉症の表現型としての有用性が示唆される。関心領域を、prefrontal cortexやanterior cingulate cortex等に拡大し、この研究課題を契機にさらなる研究の展開を図っていきたい。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (6件) 図書 (1件)
Arch.Gen.Psychiar. 63(1)
ページ: 90-100
Am J Med Genet B Neuropsychiatr Genet. 141B(3)
ページ: 222-226
Schizophr.Res. 76(2-3)
ページ: 337-342
Br.J.Psychatr. 187
ページ: 589-590
Psychiatry Res. 135(3)
ページ: 257-260
J.Clin.Psychopharmacol. 25(3)
ページ: 281-283