研究概要 |
われわれはすでにタウN279K、P301S、exon10+12変異をもつ前頭側頭型痴呆とパーキンソニズムを伴う家族性痴呆症(FTDP-17)の4家系を報告した。今回はMayo clinicとの共同研究でN279K、P301S、P301L、+16変異と特定のタウ遺伝子多型(H1 haplotype)とに有意の関連があるかどうか調べた。 タウ遺伝子変異をもつ61症例(男35例、女26例)のうちH1 haplotypeの頻度は、H1/H1 genotype、H1/H2 genotypeの順に50例(82%)、11例(18%)で、報告されている正常対照群より有意にH1 haplotypeの出現頻度が高かった。変異ごとに見るとP301L家系では8例(67%)、4例(33%)、+16家系10例(77%)、3例(23%)、N279K家系27例(73%)、10例(27%)、P301S家系5例(71%)、2例(29%)であった。発症年齢や初発症状(痴呆かパーキンソン症状か)と遺伝子型との関連はなかった。日本人症例はN279K4例、P301S4例すべてがH1/H1タイプで、日本人対照者50例すべてもH1/H1であった。以上の結果より、Caucasian人種においてはH1 haplotypeとFTDP-17の発症が有意に関連することが判明したが、日本人ではH2 haplotypeはないかきわめて低頻度であり、FTDP-17とは関連しないと考えられた。 次にシークエンス解析の結果判明したタウ遺伝子の多型は、Exon 4A (T/C) Va1289A l a, Exon 4A (C/T) Arg370Trp, Exon 6 (C/T) His441Tyr, Exon 6 (T/C) Ser447Pro, Exon 9 (G/A) Pro587Proの5つであり、その出現頻度について前頭側頭型痴呆患者と正常対照群の間に有意の差はなかった。
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