研究課題
基盤研究(B)
我々は、一卵性双生児不一致例の遺伝子発現解析から、躁うつ病に小胞体ストレス系が関与していることを示した。小胞体ストレス反応を低下させるXBP1遺伝子の-116多型については、当初双極性障害との関連を報告したが、欧米人における追試で否定された。一方、リチウム反応性との関係、統合失調症との関連について、一致した結果が報告された。我々はXBP1が神経細胞内で樹状突起・軸索から細胞体に神経可塑的変化を伝える転写因子として機能しているのではないかとの仮説を立て、検討を進め、XBP1が樹状突起に存在し、局所で翻訳され核移行することを見出した。更に、誘導されたXBP1が転写因子としてどのような働きを持つかについて検討するため、神経芽細胞腫由来培養細胞であるSH-SY5Yに活性型XBP1を過剰発現させ、DNAマイクロアレイを用いて遺伝子発現解析を行った。XBP1により発現が増加した遺伝子のうち、最もp値が低かった遺伝子は、WFS1であった。WFS1の上流配列を調べると、種間で保存されたERSE(ER stress response element)様配列が見出された。そこで、ヒトゲノムの全遺伝子中において、上流1kb以内にERSEを持つ遺伝子を探索したが、この遺伝子リストに含まれるのは、WFS1のみであった。プロモーターアッセイの結果、このERSEがXBP1過剰発現によるWFS1の発現誘導に重要であることがわかった。WFS1は、常染色体劣性遺伝疾患Wolfram病の原因遺伝子であるが、この疾患の患者の60%は精神疾患を伴っており、保因者でも精神科入院歴や自殺未遂が有意に多く見られることから、精神疾患との関連でも注目されている。これらの結果からXBP1が神経発達および可塑的変化に関与する転写因子であり、XBP1からWFS1に至る小胞体ストレス系が精神疾患の病態に関与する可能性が示唆された。
すべて 2006 2005 2004
すべて 雑誌論文 (30件)
Journal of Neurochemistry 97・2
ページ: 545-555
Journal of Neurochemistry 97:2
Neuroscience Letters 391
ページ: 7-10
American Journal of Medical Genetics, Part B 136B
ページ: 103-105
International Jounal of Neuropsychopharmacology 8
ページ: 631-632
Biochemical and Biophysical Research Communications 336
ページ: 1136-1143
実験医学 23・18
ページ: 2795-2798
分子精神医学 5・2
ページ: 145-151
精神科 6・4
ページ: 385-388
臨床精神薬理 8・3
ページ: 289-296
International Journal of Neuropsychopharmacology 8
Experimental Medicine 23:18
Japanese Journal of Molecular Psychiatry 5:2
Psychiatry 6:4
Japanese Journal of Clinical Psychopharmacology 8:3
Psychiatry and Clinical Neurosciences 58
ページ: 438-440
生体の科学 50・5
ページ: 546-547
医学のあゆみ 211・3
ページ: 258
蛋白質・核酸・酵素 49・7
ページ: 133-1134
精神科 4・5
ページ: 287-291
細胞工学 23・4
ページ: 429-432
Seitai-no-Kagaku 50:5
Journal of Clinical and Experimental Medicine 211:3
Protein, Nucleic Acid and Enzyme 49:7
ページ: 1133-1134
Psychiatry 4:5
Cell Technology 23:4