海馬歯状回神経新生現象と老年性変化の関連を調べる目的で以下の動物実験を継続中である。1)マウスの片側脳の海馬傍回をイポテン酸で不可逆的に破壊し、3〜6ヶ月放置後、神経新生が破壊側、反対側でどの様に影響を受けるか検討を行っている。2)うつ病のモデル動物としてマウスに1〜2ヶ月間に渡り慢性ストレスを与える実験系を確立し、神経新生に対する影響を検討している。3)慢性ストレスモデルも含め神経新生が減少する動物モデル系を用いて海馬傍回の貫通路起始細胞に対する影響を生化学的、組織学的に検討している。4)脳老化のモデルとしてR406Wタウを過剰発現しているトランスジェニックマウスを解析し、月齢依存性にうつ病様の異常行動(強制水泳における無動時間の延長)が出現する事、さらに電気生理学的検討を行いシナプス増強時に特異的異常を示す事を発見している。現在、うつ病様症状と神経新生との相関を検討中である。これらに実験から老年性変化の海馬歯状回神経新生現象への影響、さらにはうつ症状への影響を検討する事が可能と考えている。 海馬歯状回神経新生現象と老年性変化の関連を臨床的に調べる目的で、臨床共同研究を当初予定の都立松沢病院に加え、国立長寿医療センター、行動・心理療法科(精神科)とも行う事とし、現在症例を募集中である。倫理関係の承認は対象機関で取得済みである。十分数、症例が集まり次第、解析を開始する予走であるが、髄液の採取は現在難航しており、何らかの計画変更が必要となる可能性がある。
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