研究概要 |
本研究は、東京都精神医学総合研究所、都立松沢病院、理化学研究所、岡山大学の倫理委員会の承認を得て実施され、研究対象者には文書で説明を行った上で署名による同意を得た。候補遺伝子の患者・対照研究は、統合失調症201例(男性108例、平均年齢53.0±9.4;女性93例、平均年齢53.9±13.5)と健常対照199例(男性94例、平均年齢54.8±19.2;女性105例、平均年齢55.4±15.2)を対象とした。統合失調症の診断は、すべてDSM-IV(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorder、Fourth Edition)に基づいて実施した。 6エクソンから構成されるGlcAT-P遺伝子おける変異・多型検索を行い、新規多型を含む11多型を同定した。全多型についての患者・対照研究の結果、4つの多型[+27G>T(Ala>Ala),678G>C(Arg>Arg),IVS4+57C>A,1652_1653insG]は統合失調症患者でそれぞれ1例でのみ認められる稀な変異であった。その他、1812C>Tを除く6つの多型では、遺伝子型頻度と対立遺伝子頻度ともに、統合失調症群と健常対照群に有意な差は認められなかった。さらに、上述の4つの多型を除いた7つの多型について連鎖不平衡(LD)解析を行った結果、5'上流領域に位置する-1310A>G(SNP1),-1271_-1270ins64nt(SNP2)にのみLDの関係が認められ(統合失調症群,D'=0.8441,r^2=0.3429;健常対照群,D'=0.7861,r^2=0.3363)、-1271_-1270ins64nt(SNP2)とIVS5+41T>G(SNP3)の間にはLDギャップが存在することを明らかにした。以上の結果、GlcAT-P遺伝子多型の統合失調症との関連は否定的であると考えられた。 HNK-1ST遺伝子おいて7つの新規多型を含む21多型を同定した。同定した全ての多型に関して患者・対照研究を実施した結果、-91A>C(SNP4)多型が統合失調症と有意に関連することを明らかにした(遺伝子型頻度,P=0.01;対立遺伝子頻度,P=0.04)。また、IVS1+139T>C(SNP1)多型が、遺伝子型頻度で統合失調症と有意な関連を認めた(P=0.01)。さらに、3つの多型[IVS1+139T>C(SNP1),IVS5+7A>G(SNP10),IVS5+123T>G(SNP11)]が、対立遺伝子頻度で統合失調症と有意な傾向を認めた(SNP1,P=0.06;SNP10,P=0.08;SNP11,P=0.07)。以上の結果、HNK-1ST多型が統合失調症の危険因子のひとつとして働いている可能性が示唆された。 RELN遺伝子の全長517kbに存在する34多型を対象とした患者・対照研究を実施した。全多型についての患者・対照研究の結果、4箇所の多型が統合失調症と関連することを明らかにした(SNP5,P=0.006,odds ratio(OR)=1.49,95%信頼区間(CI)=1.12-1.98;SNP6,P=0,005,OR=1.57,95%CI=1.15-2.13;SNP7,P=0.004,OR=1.59,95%CI=1.17-2.17;SNP18,P=0.009,OR=1.53,95%CI=1。12-2.09)。このことから、RELN遺伝子多型が統合失調症の危険因子のひとつとして働いている可能性が示唆された。
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