研究概要 |
あたらしい[11C]O-メチル-L-タイロシン(OMT)の自動合成装置を試作した。この装置を既存の[11C]ヨウ化メチル自動合成装置に接続し、[11C]ヨウ化メチルを反応バイアルに導き、中のDMSA溶液中に溶解したL-タイロシンのナトリウム塩と反応させた。未反応の[11C]ヨウ化メチルをヘリウムで除去した後、混合液をディスポの固相抽出カラムBond Elute SCXとSep-Pak Plus C18に通し、不純物とタイロシン、DMSOを除去した。生食をカラムに通し、溶出するOMTのフラクションを放射能検出器でモニターしながら分取し、滅菌フィルターを通してバイアルに補集した。所要時間は[11C]ヨウ化メチル導入時から12-3分、放射化学純度は99%以上、化学純度は99%以上で生食以外は含まない、ヨウ化メチルからの放射化学的収率は60-70%,pHは中性、約15mlの注射液が得られ、以降の実験、臨床に使用可能な実用的な装置となった。 OMTの腫瘍集積について、ラットAH109A腫瘍モデルを用いて体内分布実験、動物用PETによる撮影を施行した。投与50-60分の腫瘍・筋肉比は2.47、腫瘍・肺は2.98と良好な値を示し、PETにても腫瘍は明瞭に描出され、全身および脳腫瘍の診断に使用できると考えられた。 OMTの安全性および被曝線量の試験を行った。雄雌それぞれ5匹ずつのラットに臨床診断における投与量の1万倍、9万1千倍のコールドのOMTを投与し、14日まで経時的に観察したが、異常は認められず、15日目に行った病理学的検査にても異常はなかった。11C-OMTの臨床用注射液3ロットについて最大投与量の100倍を静注し同様に調べたが異常はなかった。また、臨床投与量のOMTは、LD50の1万分の1となり十分安全であると考えられた。更に、Ames試験による復帰突然変異原生は陰性であった。また全身の被曝線量は4.5μSv/MBq,最大被曝組織は卵巣で15.2μSv/MBq,次が副腎で6.2μSv/MBqであった。以上、臨床使用に十分な安全性が確認され臨床研究の準備がととのった。
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