研究概要 |
新しいアミノ酸輸送のトレーサー、[11C]O-メチル-L-タイロシン(OMT)のPETによるがん診断を行うのが本研究の目的である。 合成装置を既存の[11C]ヨウ化メチル自動合成装置に接続しOMTを合成した。所要時間は[11C]ヨウ化メチル導入時から12-3分、放射化学純度は99%以上、化学純度は99%以上で以降の実験、臨床に使用可能となった。 OMTの腫瘍集積について、ラットAH109A腫瘍モデルを用いて体内分布実験、動物用PETによる撮影を施行した。投与50-60分の腫瘍・筋肉比は2,47、腫瘍・肺は2.98と良好な値を示し、PETにても腫瘍は明瞭に描出された。 安全性試験は、ラットにコールド体の1万倍、9万1千倍を投与する実験、標識体の100倍を投与する実験として施行され異常はなかった。また変異原性試験でも異常はなかった。被曝線量についてはMIRD法により評価が行われ、全身の被曝線量は4.5μSv/MBq,であった。以上、十分な安全性が確認され臨床研究に移行した。 健常者の画像では、腎および尿路、肝、脾、腸管が見えたがメチオニンよりは低く、膵臓は確認できなかった。 正常脳の集積は低く、脳腫瘍は高いコントラストで描出され、FDGよりも明瞭であった。17人の種々の癌患者にOMT-PETを施行した。大腸がんの多発転移症例では、FDGと向様に多発転移が指摘できたが、腫瘍集積は低かった。食道がんの患者では、FDGで偽陽性となった炎症性リンパ節がOMTでは真陰性であった。24病巣の感度はFDG:94%(15/16),OMT:75%(12/16),特異度はFDG:43%(3/7),OMT:75%(6/8),正診率はFDG:78%(18/23),OMT:75%(18/24)であった。正診率ではFDGを超えることはできなかったが、偽陽性を減らし、特異度の向上でOMT-PETは特徴を発揮することができた。
|