研究概要 |
肝機能不全に対する新たな治療法-「肝幹細胞を用いた細胞移植治療法の開発」を目的とし、本研究では(1)移植細胞源の確立および(2)細胞移植評価モデルの確立を目指している。(1)細胞源としてはマウス胎仔・成体肝組織からの肝幹細胞分離および成熟肝細胞へのin vitroでの誘導が既に可能となっているが、組織からの細胞採取では現時点では細胞数の確保に問題があることから、本年度はより未分化で増殖力の旺盛な胚性幹細胞(ES細胞)から肝細胞への分化誘導を検討した。AFPプロモーター下にgreen fluorescent protein(GFP)を発現する遺伝子を導入したES細胞を作成することで、GFP発現の有無によりES細胞から内胚葉系へ分化した細胞の分離精製を可能とした。さらにGFP陽性内胚葉系細胞をThy-1陽性間葉系細胞の共培養をおこなうと、肝幹細胞と同様に(Hoppo T, et al. Hepatology.2004)GFP陽性細胞は形態的・機能的に成熟した肝細胞へ分化することが確認され、ES細胞から成熟肝細胞へのin vitroでの分化誘導が可能となった。また、組織由来の肝幹細胞に関しても、より安定した分離精製のため、新たな特異的表面抗原による分離法を開発中である。(2)細胞移植評価モデルに関しては、共同研究者の河野らが開発したalb-DTRマウス(ジフテリア毒素受容体を肝細胞のみに強制発現させ、毒素を投与することで用量依存性に再現性よく肝障害をきたすマウス)を用いて検討しているが、ヘテロ型ではジフテリア毒素受容体の発現に個体差が大きく、モデルとしての問題点が明らかになった。このため、現在は比較的個体差の少ないと考えられるホモ型マウスの作成を行っており、これを用いて細胞移植モデルとしての評価及び細胞移植の有効性を引き続き検討する予定である。 さらに上記の細胞移植治療の延長として、将来的には細胞のみならず小組織片の移植の可能性も検討する必要があることから、in vitroにおける三次元組織再構築の検討を行い(Sugimoto S, et al. Tissue Eng.2005.in press)、そのメカニズムを検討を開始している。
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