研究概要 |
がんの抗がん剤に対する耐性獲得の研究が種々の領域で行われており、がん細胞内への薬剤の取り込み抑制、薬剤排泄亢進や薬剤代謝亢進が報告されている。分子標的治療薬イマチニブの再発進行消化管間質腫瘍(GIST)への投与は劇的な縮小効果が得られ、延命効果も得られたが、その後再増殖し後期耐性を獲得したGISTが出現している。我々はイマチニブの標的分子KITとPDGFRαを中心に、薬剤抵抗性のメカニズムを解析した。現在まで、11例の部分耐性の所見を示すイマチニブ耐性病変の手術乃至RFAによるアブレーション治療を行い腫瘍組織での、(1)KIT、PDGFRαタンパク質の発現状態、(2)KIT、PDGFRαタンパク質下流のキナーゼの活性化、(3)KIT、PDGFRα遺伝子のイマチニブ耐性型の新規遺伝子変異の有無を検索した。 耐性GISTは全て投与前と同じくKITタンパク質を強発現し、KIT下流キナーゼ系(AKT系,MAPK系)の活性化を認めた。7例に初発時KIT遺伝子変異を認める同じKIT遺伝子アリル上のキナーゼ領域(エクソン13に3例、エクソン14に1例、エクソン17に3例)に耐性型のsecondary missense mutationを認めた。その他の症例に関してはターゲット遺伝子には変化を認めなかった。これとは別に、KITとPDGFRα遺伝子に変異を認めない若年性GISTの発生原因、KITタンパク質の活性化原因を追及した。 1.若年性GISTでは半数以上でKITとPDGFRα遺伝子に遺伝子変異を認めなかったが、KITタンパク質の活性化や、その下流のシグナル伝達系(AKT系,MAPK系)の活性化を認めた。 2.Western Blottingでは、KITやPDGFRα遺伝子に遺伝子変異を認めない若年性GISTでは、活性化したKITの分子量がwild typeKITタンパク質やKIT遺伝子変異を持つKITタンパク質より分子量が小さくなっていた。 3.このKITタンパク質のC末やN末に欠損アミノ酸は認めなかった。 特定の部位のGlycosylationの欠損で、EGFRではautophospholylationがおこることが知られており、今後、二次遺伝子変異を認めない耐性GISTや若年性GISTでのGlycosylationの変化を検討する予定である。
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