研究課題
基盤研究(B)
膵島移植によりI型糖尿病の治療が実施されているが、その中で解決されるべき大きな問題はone donor/one recipientの移植が現段階では不可能なことである。本研究では骨髄細胞の膵島再生への関与を膵島再構築モデルで検討し、骨髄膵幹細胞による糖尿病治療の可能性を探るものである。初年度、B6マウスの膵島を単一な細胞に分散後、再構築されるin vitroの系において、GFPトランスジェニックB6マウス(以下GFPマウス)由来骨髄細胞を混合すると、効率は低いが骨髄細胞がこの再構築膵島に取りこまれ、しかも、内分泌細胞に特異的な抗体で染色されることを明らかにした。次年度はB6マウスの膵島250個とGFPマウス由来骨髄細胞3×10^6個を混合しストレプトゾトシン糖尿病B6マウスの腎皮膜下に移植し、血糖制御能と、インスリン、グルカゴン、PDX-1、factorVIII陽性細胞への分化を共焦点レーザー顕微鏡で観察した。骨髄と膵島の混合移植によっても血糖値の変動は膵島単独移植と差がなく、血糖制御能には差は認められなかった。移植された膵島は術後3日で膵島の構造が壊れ、膵島細胞と骨髄細胞とが混在するようになり、移植後5〜7日で膵島は再構築される。その中に骨髄由来の細胞が存在するが、内分泌細胞への分化は見られなかった。また、長期的にはこれらの細胞は膵島の周りに位置するようになった。一方、GFPマウスにおいて、ストレプトゾトシン投与あるいは部分膵切除を行い、膵島の再生を誘導する系においても骨髄細胞の関与を検討したが、膵島内分泌細胞への分化は見られなかった。しかし、両方のモデルにおいて、再生誘導の早期には骨髄細胞由来の細胞の局所への浸潤が見られることを明らかにした。今後これらの知見を重視し、再生機転を解明し、その応用を図る。
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