研究概要 |
本研究ではマウス大腸癌細胞より抽出したRNAとGM-CSF遺伝子のRNAを同時にDCに導入し,これを用いた癌ワクチン療法の有用性を担癌マウスモデルの系を用いて検討した. 1.腫瘍RNAおよびGM-CSF RNA導入DC接種マウス脾細胞より誘導されたCTLの細胞傷害活性 DC/CT26 RNA接種マウスの脾細胞より誘導したCTLのCT26に対する細胞傷害活性はコントロールのRNA非導入DC接種群やDC/EGFP RNA接種群に比較し有意に高かった(p<0.01).またGM-CSF RNAの同時導入によりこの傷害活性は明らかに増強された(p<0.05). 2.腫瘍RNAおよびGM-CSF RNA導入DC接種マウスにおける脾細胞からのIFNγ産生量の検討 RNA導入DC接種マウス脾細胞をresponder,非働化CT26をstimulatorとし,R:S=10:1の割合で48時間co-cultureした培養上清中に産生されるIFN-γはDC/CT26 RNA+GM-CSF RNA群で1560.4±115.3pg/ml, DC/CT26 RNA群で1496.4±160.7pg/mlとコントロール群に比べ有意に高値を示したが,両群間には差は認めなかった. 3.マウスCT26皮下腫瘍モデルにおけるRNA導入DCの腫瘍増殖抑制効果の検討 DC/CT26 RNA+GM-CSF接種群とDC/CT26 RNA群は共にPBS群,DC群に比べて著しく高い腫瘍増殖抑制効果を認めた(p<0.05).この腫瘍増殖抑制効果はGM-CSF RNA同時導入群でより強力な傾向を示した.またDC/CT26 RNA接種群では7匹中1匹にのみ腫瘍完全消失マウスを認めたのに対し,DC/CT26 RNA+GM-CSF RNA接種群は7匹中3例(42.9%)に腫瘍完全消失を認めた.さらにこの群ではCT26の再投与,再々投与をも完全に拒絶した. 以上より腫瘍RNAおよびGM-CSF RNA同時導入DCを用いた癌ワクチン療法は獲得免疫を賦活し,著しい増殖抑制効果を認めることから,消火器癌に対する有用性が示唆された.今後臨床応用が期待される.
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