研究概要 |
本研究は、癌患者血清中に存在する癌抗原特異的なIgG抗体をSEREX法にて検出することで、癌の早期診断方法の開発や悪性度を診断を目的とするものである。クローニングされた分子は、分子標的治療への発展を模索することとしている。 平成16年度は、ヒト食道扁平上皮癌細胞株より作成したcDNAライブラリーからタンパクライブラリーを作成して、患者血清によりスクリーニングを行った。合計350種類以上の抗原遺伝子をクローニングした。癌との関連性が未知である遺伝子を選択して、新たなる診断・治療への戦略を模索した。第1段階として、クローニングした遺伝子断片からペプチドを合成してハウスメイドのELISAアッセイ系を確立した。健常者対照群における陽性率が5%未満である抗原にうち15%以上の陽性率を示す抗原遺伝子を選択した。有望遺伝子として、次の17種類の遺伝子を選択した。P53,myomegalin, CU-EC-1,enigma, mitosin, KIAA1545,ZIC2,Hook2,AGENCOURT_7565913,symplekin ; Huntingtin interacting protein, Alu subfamily SB sequence contamination warning entry, hepatocellular carcinoma-associated antigen HCA25a, AGENCOURT_7892870,surfeit 1,ATP synthase6,Ki-1/57 intracellular antigen, cyclin-like。このうち、ELISAキットの作成に成功したのは、HCA25aである。ELISAにて血清IgG抗体価が食道癌患者で有意に高値を示すことが明かとなった。一方、臨床病理学的検討では、myomegalin抗体を有する患者では、予後が良好である傾向を認めた。一般にSEREX抗体は、既存の腫瘍マーカーとの重複陽性症例が少ないため、併用することで、陽性率を高めることが可能と思われた。
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