研究概要 |
平成16年度に、ヒト初期胎盤より得た羊膜の初代培養時に出現する小型細胞から成るドーム状構造物をcolonial cloningしてHEA-1 cell lineを樹立した。このcell lineをヌードマウスの皮下に移植すると三胚葉性のテラトーマを形成することから、我々が樹立したcell lineは多分化能を有する細胞であることが証明された。そこで次にHEA-1細胞に低濃度のレチノイン酸を作用させ、in vitroで多極神経細胞(抗NSE抗体、抗NF 150KD抗体、抗NF-200KD抗体にて免疫染色陽性)やグリア細胞(抗GFAP抗体、抗S-100抗体に免疫染色陽性)を分化させることに成功した(第4回日本再生医療学会抄録P228,2005,.Human Cell vol.19 2006,in press)。 本年度は、HEA-1細胞を懸濁培養して胚様体を作製し、これをローズのchamberに入れ、我々が作製したEmbryotrophic factor (Human Cell, 13 : 185-195,2000)を添加したDMEM/F12 mediumを使って潅流し胚子様構造物を作製した。この中に認められた消化管様構造物に付着する数個の腺構造物を実体顕微鏡下で別々に採取し、それぞれ初代培養を行った。それぞれの初代培養細胞を通常の3倍量のglucose含有培養液で培養したところ、免疫染色によりインスリンを含有し培養液中にそれを分泌する細胞が存在した。しかし、glucose量を通常量に戻すとインスリン産生は認められなくなった。現在、インスリン産生が認められた初代培養系からsingle cell cloningを行い、インスリン産生能の高い細胞の分離とインスリンを産生するというphenotypeが消失しないようにするため、ストレプトゾトシンで糖尿病にしたヌードマウスに細胞を移植した中から、糖尿症状が消失したマウスを選び継代を行っている。 平成18年度は、ヌードマウスにて継代維持しているインスリン産生細胞からcell lineを樹立し、これを用いてバイオ人工ラ島を作製する予定である。
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