研究概要 |
1.臨床例での検討 体外循環を使用する成人心臓手術患者を対象として,3種類の送血管について大動脈内の血流動態を評価した。計測は体外循環が導入され,完全体外循環が確立した時点で経食道エコーにより下行大動脈内の血流を評価し,さらに術野において大動脈に直接超音波探息子をあて弓部大動脈付近の血流を評価した。現在それぞれの送血管に3〜4例が割り当てられ,最終目標の各群5例になったところで,総合的評価を行う予定にしている。現時点の結果としては,すでに行ったモデル実験と同様の血流分布パターンと流速パターンがえられている。 2.数値計算による大動脈弓内の血流解析 カニューレを挿入した大動脈弓内の流れについて三次元数値解析を行い,カニューレから噴出する液噴流の噴射方向が大動脈弓内の流れに及ぼす影響を調べた。曲率半径37.5mm,大動脈径25mmの大動脈弓モデルを使用し,噴出径4mmのdLP^<TM>カニューレを,上行大動脈端から19.8mmの位置に挿入した。カニューレから噴出する液噴流の噴射方向が,大動脈弓モデルの中心軸に対して0,45,90°の3つの条件について計算を行った。境界条件として,カニューレ出口面に対して直角に血液流量3.5L/min.に相当する,速度4.64m/sの一様流を与えた。計算の結果,液噴流が大動脈の中心軸に対して90°で噴出した場合,液噴流は上行大動脈の壁面に衝突した後,らせん状に回転しながら下流へ流れ,下行大動脈ではその流れの回転成分が弱まることが分かった。また,カニューレからの液噴流が衝突する上行大動脈の壁面において大きな壁面せん断応力が発生する。大動脈弓内の流れはカニューレから噴出する液噴流の噴射方向によって大きく異なることが明らかとなった。
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