研究概要 |
大型雑種成犬(体重>20Kg)を使用し(1)約7〜10日間,心血管作動薬の経口投与による急性心不全モデル作成後の補助人工心臓効果の検討を試みたが,Aアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤の投与では薬剤性胃腸炎による消化不良が高頻度に発生し脱水と相俟って実験時の体重減少と頻脈化が急性心不全モデル作成の困難化へと進んだ.また現時点ではACE阻害剤注射薬がないため主としてβ遮断剤注射による急性効果の評価となった.(2)左室圧・容積曲線(LV loop)解析では約4時間にわたる左心補助人工心臓駆動では左心機能回復効果は不十分でSTI解析,LV loop上のEesなどの指標でも有意差を認めなかったが少なくとも急性心不全による血行動態の急激な憎悪は発生しなった.左室内コンダクタンス・カテーテルによる左室内階層別容積の実験中における経時的推移を検討したがmicrosphere左冠状動脈注入による急性心不全モデルでは左室心尖部よりは左室基部で局所駆出率は高値を示し左冠状動脈回旋枝領域へのmicrosphere流入特性が低いことが原因と推測された.なお補助人工心臓駆動急性実験では循環血液量の保持などのため最大限5時間前後駆動が限界であり、この間における細胞工学的検討としては左室心尖部と対角枝領域での心筋採取で行い現在PCR法で解析中である. 以上の結果、大型成犬急性不全心モデルに対する左室補助人工心臓駆動では(1)LV ADによる不全心筋への負荷軽減,(3)薬剤による心筋抑制による回復促進と心筋線維化防止策,などの複合治療体系に今後直接的心筋細胞移植法などを加えつつ,血行動態指標による臨床管理でBridge To Recoveryがより客観的に実施できる.
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