研究概要 |
ウサギの頸動脈を外頸静脈に移植する実験モデルを用いて,静脈グラフトの遠隔期期開存率,高コレステロール血症の影響について検討した.術後8週後の開存率は正常コレステロール血のウサギでは80%の開存率が得られたのに対し,高コレステロール血症のウサギにおいては,38.5%と有意に低値であり,高コレステロール血が明らかに遠隔期の開存率を低下させる要因である事実が明らかとなった.術後8週の高コレステロール血症の静脈グラフトでは,泡沫細胞の浸潤が内膜病変で著明であるのに対し,正常コレステロール血の静脈グラフトの内膜肥厚病変での泡沫細胞の浸潤はごく限られておりコラーゲン線維が豊富であった.また,術後4週における高コレステロール血症ウサギの静脈グラフトの開存率も40%と低値であり,内膜肥厚病変による内腔狭窄が閉塞につながるというよりも,泡沫細胞の浸潤を豊富に含むプラークの破綻に伴う血栓形成などの機序が静脈グラフトの閉塞の機転として重要であることが示唆された.また高コレステロール血症自体が,病変内の血栓性を高める可能性も考えられる. 現在,これらの静脈グラフトの内膜病変部について,研究協力者の相川真範博士協力のもと,主にサイトカイン,構成細胞の解析,MMP, Tissue factorなどの免疫組織染色による解析を進めている.また,泡沫細胞浸潤を抑制する可能性の期待されるACAT阻害剤の静脈グラフトへの効果についても,ウサギ静脈グラフトモデルを用いての実験が進行中である. 現在のところ,静脈グラフトのリモデリングについてのより詳細な病因解析を進めているが,遠隔期の開存率向上のためには,内膜肥厚病変の量的抑制と共に,安定化プラーク形成を促す治療が重要であり,ACAT阻害剤を含めた薬物治療が重要であると考えている.更に,不安定化したプラークの破綻,引き続く血栓性閉塞の予防的治療について検討する予定である.
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