研究課題
われわれは塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)徐放システムによる血管新生療法を開発し、動物の心筋梗塞モデル、下肢虚血モデルにおいて虚血組織の再還流と機能改善につながることを明らかにした。しかしながらbFGF単体の徐放では新生血管の長期にわたる安定性に問題がある。また、動物実験では効果が認められた血管新生療法が、臨床応用された場合、局所の動脈硬化病変が著しいことから充分な効果が得られない可能性がある。これらの問題点を解決することを目的として、われわれはbFGF徐放システムと他の増殖因子徐放あるいは薬剤を組み合わせ、最適な補助療法(adjuvant therapy)を開発する研究を進めてきた。平成18年度の研究では高脂血症のウサギを用いた下肢虚血モデルを作成し、bFGF徐放システム単独、およびHGF, PDGF徐放の併用では健常ウサギの下肢虚血モデルと比較すると充分な血流改善効果が得られないのに対し、ヘパリンの併用により、血管新生効果が増強することを明らかにして報告した。また、セロトニン阻害薬の併用によっても同様の効果が認められることを明らかにして報告中である。また、ラットの心筋梗塞モデルを用い、エリスロポイエチン(Epo)の徐放による局所投与が、全身的な多血症を生じることなく、心機能の改善をもたらすことを明らかにして報告した。同様に、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の徐放システムも開発し、ラット心筋梗塞モデルに対する局所投与効果を検討したが、対照群と比較して有意な差は認められなかった。これらの研究成果をもとに、今後の臨床応用に向けての血管新生治療プロトコルを現在検討中である。
すべて 2007
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