研究課題/領域番号 |
16390397
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
胸部外科学
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
濱野 公一 山口大学, 医学部, 教授 (60263787)
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研究分担者 |
古谷 彰 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (90346552)
伊東 博史 山口大学, 医学部附属病院, 助手 (90363100)
李 桃生 山口大学, 医学部, 助手 (50379997)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2005
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キーワード | 心不全 / 骨髄幹細胞 / 血管新生 / 心筋再生 / テーラーメイド |
研究概要 |
自己骨髄幹細胞を用いた心血管再生治療は難治性重症心不全患者に対する新しい有効な治療法として期待されている。しかし、心不全の発症原因としては、虚血、心筋症、あるいは双方に起因するなど様々なケースがあり、それぞれの患者の病態に応じたテーラーメイド再生治療が求められる。 我々は骨髄幹細胞をex vivoで心筋細胞へ分化誘導させ、梗塞心筋へ移植後の心筋再生効果を調べた。マウスCD117陽性骨髄幹細胞を分離採集し、TGF-βを添加し培養したところ細胞の心筋構造蛋白(myosin, troponin)と転写因子(GATA4,NKx2.5)の発現が有意に上昇した。24時間TGF-βを添加し培養した細胞(2x10^5)をマウス梗塞心筋内に注入したところ、治療後の心機能(EF%)は培養しない骨髄幹細胞を移植した群に比べ、有意に良好であった(P<0.01)。また、治療後90日目に、TGF-βを添加し培養した骨髄幹細胞を移植した群のみ・梗塞心筋内に約30%の骨髄幹細胞がmyosin陽性であり、梗塞領域に心筋様組織が再生したことも組織学的に観察された。移植前のTGF-βの添加培養処置は骨髄幹細胞の心筋細胞への分化を誘導し、骨髄幹細胞移植による心筋再生の効果を一層高めると思われた。 一方、骨髄幹細胞を用いる血管新生治療に関しては骨髄細胞の投与前低酸素培養刺激によって、血管新生が高まるか否かを調べた。ラットから骨髄細胞を採集し、単核球を分離した。低酸素培養刺激(2%酸素状態)によって、骨髄細胞のVEGFとVE-cadherinのmRNAは著明に増加した。また、24時間低酸素培養した骨髄細胞をラット下肢虚血筋肉内に注入したところ、治療後の虚血下肢の血流量は培養しない細胞を注入した群に比べ有意に高値であった。骨髄細胞に対する注入前の低酸素培養刺激は骨髄細胞の血管再生効果を高めることが可能であった。 以上の結果から、異なる前処置(preprogramming)は骨髄幹細胞の心筋再生と血管再生効果をそれぞれ高めることが可能であった。難治性心不全に対する自己骨髄幹細胞を用いた心血管再生治療は移植細胞の異なる前処置により、患者の病態に応じたテーラーメイド再生治療が実現できると思われた。
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