研究課題/領域番号 |
16390403
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤堂 具紀 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80272566)
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研究分担者 |
稲生 靖 東京大学, 医学部附属病院, 研究拠点形成特任教員 (50372371)
田中 実 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (50332581)
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キーワード | 脳腫瘍 / ウイルス療法 / 単純ヘルペスウイルスI型 / ウイルスベクター / 腫瘍免疫 |
研究概要 |
ウイルスゲノムを遺伝子工学的に改変し、腫瘍細胞で選択的に複製するウイルスを作製して、ウイルス複製に伴う直接的な殺細胞効果を腫瘍治療に応用する。本研究は、特に増殖型単純ヘルペスウイルスI型(HSV-1)を用い、抗腫瘍効果が高くかつ安全で臨床応用可能な脳腫瘍に対する新治療法の研究開発を目的とする。三重変異を有する第三世代HSV-1のG47Δを基本骨格とし、bacterial artificial chromosome (BAC)を利用した遺伝子組換えHSV-1作製システムを確立し、4〜5つの異なる遺伝子組換えHSV-1の作製を同時に並行して2〜3ヶ月で行うことを可能とした。これにより、複数の治療遺伝子の効果を同時に比較検討したり、複数種の遺伝子組換えHSV-1を混合して同時に投与したりすることができる。HSV-1が腫瘍内で複製することに伴って特異的抗腫瘍免疫を惹起することから、この遺伝子組換えHSV-1作製システムを用いて、マウスIL-12遺伝子を挿入した第三世代HSV-1のT-mfIL12とその対照T-01をまず作製した。HSV-1に感受性の高いA/Jマウスと、同系で低免疫原性のNeuro2a神経芽腫細胞を用い、脳腫瘍および皮下腫瘍モデルで効果を検討した。両側皮下腫瘍の片側に腫瘍内投与したところ、両側の腫瘍に対しT-mfIL12はT-01に比べ有意に大きな抗腫瘍効果を示した。遠隔腫瘍に対する効果はT細胞免疫を介していることが判明した。脳腫瘍に対しては、T-01、T-mfIL12ともに生存期間の延長を示したが、両群間に有意差はなかった。T-mfIL12はまた、T-01では無効であった静脈内投与でも、皮下腫瘍に対し抗腫瘍効果を示した。増殖型遺伝子組換えHSV-1は脳腫瘍治療に有用であり、今後さらに臨床応用を視野にいれた前臨床評価や新規のウイルスベクター開発を進める。
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