研究概要 |
疾病治療に必要な様々な情報を効率よく細胞に伝えるためのバイオデバイス「structure-based drug(SBD)結合人工セル」の開発を行った。昨年度は、まずFasやTRAILを鋳型にしたSBDをデザインし、これらを脳腫瘍細胞に添加して誘導される細胞死とそのシグナル伝達に関連したモレキュル(たとえばcaspase3,7,8、PARP、DNaseγ)の動きを、それぞれenzyme-immunoassay法、Western blot法並びに免疫蛍光法で調べ、当該モレキュルが、その鋳型としたFasやTRAILと同様のシグナルを細胞内に伝えうることを証明した。一方で、人工セルの基盤となるリポソームについては、各種リポソームを培養細胞に添加し、共焦点レーザー顕微鏡及びビデオ強化型微分干渉顕微鏡を用いて、その細胞内取り込みを詳細にした。本年度は、昨年度Structure-based drug design法で設計したSBDを、人工セルの基盤となるリポソームに結合させたSBD結合人工セルを調製し、脳腫瘍、悪性黒色腫、乳がん等の各種培養細胞に添加後、共焦点レーザー顕微鏡及びビデオ強化型微分干渉顕微鏡を用いて、その細胞内への取り込み等を観察した。結果は、表面が正に荷電しているカチオン性リポソームで観察できた所見と基本的には変わりがなかった。また、SBDは、培養液中では比較的安定であったが、生体内(担癌マウス)では、合成法や置かれた環境により構造が変化しやすいといった欠点が見出された。生体内で認められた欠点を補うためには、さらに新しい技術の開発が必要と考えられた。一方、生物学的活性の確認もSBD単独と、人工セルに結合した場合との間では、その分布並びに生物活性に大きな違いが見られなかった。
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