研究概要 |
ラットの右前頭葉に定位的脳手術法を用いて、脳腫瘍細胞を注入移植して数日後、同一部位からリポソーム法にてバイオナノ粒子(マグネタイト)を腫瘍内に投与。腫瘍局所での効果的な抗腫瘍免疫の誘導を促進する目的で、同系ラットの骨髄細胞から誘導した樹状細胞を定位脳手術にて腫瘍局所へ移植した。ラットを用いて実施した脳腫瘍温熱治療の基礎研究では、治療後脳腫瘍内にT細胞の著明な浸潤を認めた。このように細胞内温熱治療、樹状細胞、T細胞の相互作用による抗腫瘍効果や、腫瘍を取り巻くサイトカインネットワークに及ぼす影響などについて、ラットの生存期間を統計学的に解析することにより、また摘出した脳標本を免疫組織学的および分子生物学的に検討した。即ち、経時的に腫瘍組織と周辺正常脳組織を一塊にして摘出し、HSP-70の発現、壊死像の範囲、マクロファージやマイクログリアの浸潤、リンパ球の集積(特にCD3,CD4,CD8陽性リンパ球)を病理組織学的及び分子生物学的に観察するとともに、周辺脳の非特異的免疫反応が発現しているかを観察した。また、細胞内加温に伴う獲得免疫に関して、温熱による腫瘍細胞の変化が抗原呈示能を上昇させる、或いは温熱処理によりMCL周囲の至適温度分布部の細胞から誘導されるHSP-70 familyを中心としたheat shock proteinが強く関与しているものと考え、その免疫獲得機構のメカニズムにつき検証した。さらに、右大腿部皮下に脳腫瘍細胞株を移植後10日目にマグネタイトを注入。このラットを高周波磁場処理(118Hz,384Oe,30min.)後、経時的に摘出し、細胞内のHSP70の発現量の経緯をWestern blotting法にて半定量解析。それとともにMHC class I分子細胞表面発現量をFACS解析した。さらに温熱処理したラットの脾臓のTリンパ球を抽出し、そのCTL assayを施行。腫瘍特異的免疫が個体に獲得されているかを観察した。樹状細胞およびT細胞集団が分離されているかどうかはflow cytometryにて細胞表面抗原解析を行い確認。このようにして得た腫瘍細胞、樹状細胞およびT細胞を24穴プレートの1穴の中に2x10^4個の腫瘍細胞、2x10^5個の樹状細胞、そして2x10^6個のT細胞を混合して共培養し、抗腫瘍効果を検討した。
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