研究課題
基盤研究(B)
バイオナノ粒子の磁性酸化鉄超微粒子を高周波磁場内に入れるとヒステレーシス損失により熱を発生する原理を利用し、細胞内に取り込ませて加温する細胞内温熱療法の開発を展開してきた。特に、磁性酸化鉄超微粒子の一つであるマグネタイト(Fe_3O_4)は発熱効率が良好であり、これに生体適合性および腫瘍への特異的集積性をもたせ、脳腫瘍への集積性を高めれば、周辺の正常脳を傷害することなく脳腫瘍を選択的に加温治療できるInvivoでの最適温熱条件に基づき、脳腫瘍細胞が生着したラットにマグネタイトを局所投与し高周波磁場処理を行なったところ、腫瘍の直接的な抗腫瘍効果の他に腫瘍細胞の温熱処理にて腫瘍細胞の抗原提示能が活性化され、この結果、免疫誘導によると考えられる間接的な抗腫瘍効果を認めた。今回、強力な抗原提示細胞である樹状細胞を組み合わせ、その免疫誘導の増強が治療効果の向上に結び付くかを検討した。まず最初に、腫瘍細胞と樹状細胞そしてT細胞を1つの培養系で共培養するinvitroの系を用い、リポソーム法でマグネタイトを導入されたグリオーマ細胞が、高周波磁場処理後に樹状細胞の分化・成熟を促進するかどうかについて基礎的検討を試みた。樹状細胞はその成熟過程で、MHCclass I、class II、CD80、CD83、CD86などの細胞表面抗原の発現や、抗原の貪食能が変化してゆくことが知られており、樹状細胞の細胞表面抗原の推移、貪食能の変化を調べ、グリオーマ細胞に細胞内加温することによって樹状細胞が効果的に分化・成熟し、細胞内HSP70family活性に基づく抗原提示能の増強が誘導された腫瘍細胞を抗原として貪食することができるかどうかについて検討している。次に活性化された樹状細胞が効果的にT細胞に抗原提示し、腫瘍特異的T細胞を誘導することができるかどうかについて細胞障害性試験などを実施して検討した。抗腫瘍免疫においては、細胞性免疫がその中心的役割を演じており、CD4+T細胞をTh1へ誘導することが重要と考えられている。我々は樹状細胞をIL-2とGM-CSFで刺激することにより、IL-12の産生が促進されることがわかっており、培養上清中のIFN-γおよびIL-12の産生を測定することによりIL-2とGM-CSFの併用使用による抗腫瘍免疫の変動についても検討している。
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