凍結脳損傷によるラット局所脳浮腫モデルを作成し、血管透過性の定量評価をエバンスブルー静注後の脳組織蛍光定量により行った。また乾燥重量法による脳水分含量測定により脳浮腫の定量的評価を行なった。さらに、損傷部でのVEGF発現の変化を免疫染色、ウェスタンブロット法を用いて検討した。VEGFを標的とした脳浮腫抑制効果の検討のために、当初の計画であるRNAiを用いての研究、中和抗体を用いての研究に加えて、より効率的に使用可能な低分子薬剤である新規VEGFレセプター阻害剤による効果をも検討した。脳浮腫(水分含量)は凍結脳損傷後24時間でピークとなることが確認され、VEGFレセプター阻害剤を腹腔内投与することにより、脳水分含量増加が有意に抑制される結果を得た。また、血管透過性についての定量的検討でも、血管透過性は損傷24時間後に亢進しており、VEGFレセプター阻害剤を投与することにより透過性亢進が抑制されることが示された。以上により、凍結脳損傷モデルにおける脳浮腫、ことに血管性脳浮腫は、新規VEGFレセプター阻害剤により有意に抑制されることが明らかとなった。VEGFに対するRNAi construct (siRNA ; VEGF)については、transfectionに必要な至適パラメーターの設定およびVEGF発現抑制効果の検証をvitroで行なった。さらに、Fisherラット中大脳動脈閉塞再潅流モデルを確立し、脳虚血再潅流に伴う局所脳浮腫モデルを作成した。
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