研究概要 |
予後不良な悪性グリオーマに対し、MBP遺伝子発現プロモータで自殺遺伝子(HSVtk)を制御した脳特異的レトロウイルスベクターを用いた遺伝子治療の基礎研究を続けてきた。さらに、グリオーマ細胞のMBP遺伝子発現量によって遺伝子導入効率が左右されない治療法として、MAGE-D4遺伝子(Cancer Res 61:4809-4814,2001;Gene 277:129-137,2001)や他の遺伝子発現プロモータを組込み込んだ高力価グリオーマ特異的レトロウイルスベクターの開発も試みている。現在、数種類のプロモータ領域が同定できており、それぞれのプロモータを組込んだレトロウイルスベクターの構築と、その細胞障害活性を検討している。選択的部位ゲノム挿入レトロウイルスベクターの開発は、2、3のプログラム候補が完成し、高力価活性の誘導を検討中である。悪性グリオーマの中で最も悪性度が高く未分化な神経膠芽腫(GBM)はOlig2転写因子を高率に発現しており、Olig2以降の分化制御カスケードの障害した病態とも解釈できる。それ故、Olig2下流因子を同定し、GBMの障害された分化過程を修復することで悪性度の低い病態に分化させる新たな治療法にも着手している。 ONS-M21抗体が認識するグリオーマ関連抗原がintegrin・3(Br J Cancer 68:831-837,1993;Br J Cancer 79:333-339,1999)であることから、integrin・3の脳内発現するメカニズムと、MAGE-D4遺伝子や他の遺伝子増幅との相関についても検討している。グリオーマのCystatin C、CDC25BおよびRCAS1の表現の意義については既に論文発表した。さらに、マウスES細胞より誘導したマイクログリアの組織内浸潤能を用いた新たな免疫細胞療法の開発にも着手している。
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