研究分担者 |
笹島 浩泰 京都府立医科大学, 医学研究科, 助教授 (80196188)
大和田 敬 京都府立医科大学, 医学研究科, 助手 (80332948)
木村 聡志 京都府立医科大学, 医学研究科, 助手 (00301424)
川辺 拓也 京都府立医科大学, 医学研究科, 助手 (10360033)
栗岡 宏樹 京都府立医科大学, 医学研究科, 助手 (30405295)
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研究概要 |
本研究では,腫瘍血管新生およびその生物的意義の研究に立脚して,脳腫瘍のロジスティクス(エネルギー補給路)に基づいたより選択的な分子標的診断および治療法の樹立を目指す点にある. 脳腫瘍におけるF-18-fluorodeoxyglucose (FDG)とF18-B-10-fluoroboronophenylalanine (FBPA)のPET動態解析で,グリオーマではK1が多様であり,VEGFおよびGlut-1免疫染色では血管透過性が亢進しているが,血管面積が小さく,組織不均一性を反映していた.一方,髄膜腫におけるK1は統計学的に有意に高く,活発な物質輸送が推定された.免疫染色性はいずれも高く,血管透過性が亢進し,血管面積が大きいことが判明した.FBPAのK1は腫瘍増殖能を反映しており,腫瘍増殖と関連していた. 脳腫瘍では^<15>O-ガストレーサーによる脳血流および酸素代謝は,脳腫瘍病変は組織不均一性によって均衡状態が崩れており,とくに悪性腫瘍では著明である.したがって,非腫瘍性病変に比較して病初期から脳血流と酸素代謝の比率である酸素摂取率が低下しており,早期診断基準の一つであるとともに,薬剤透過性の障害ともなりうる病態であった.(^<11>C-methyl)-L-methionine (Met)は浸潤性伸展様態を明らかし,^<18>F-dopa PETは基底核部近傍腫瘍の浸潤性および圧排性伸展の鑑別に有用である.治療方法の選択の指針となり得る.FDGによる糖代謝は異型や最悪性部を推定し,悪性度の有力な指標となり,無症候性脳腫瘍における治療の適応や時期の判断に有用である.治療後には,治療効果とともに周辺脳の可塑性が評価され,合併症などの病態も追跡可能である. 本研究からPETによるトレーサー動態解析を含む多面的循環代謝の検討は,それぞれのトレーサーの特徴に基づいて腫瘍血管の脆弱性や透過性に関する知見,および増殖能などの脳腫瘍のロジスティクスを含む多面的循環代謝動態が把握される.脳腫瘍の循環代謝の特異性および多様性,さらに頭蓋内病態を定量評価によって最適化かつ個別化治療の遂行に重要な役割を担うものと期待される.
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