研究課題/領域番号 |
16390421
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
大井 靜雄 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (30194062)
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研究分担者 |
日下 康子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (00292219)
野中 雄一郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (60345824)
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キーワード | 髄液循環動態 / 神経内視鏡手術 / 幼若脳 / 髄液主循環路 / 3D-CT cisternography / 胎児水頭症 / 難治性水頭症 / Evolution Theory in CSF |
研究概要 |
本研究の目的は、幼若脳における特異的脳脊髄液(CSF)ダイナミクスの分析によって「非交通性水頭症」の治療中における内視鏡下脳室開窓術の無効例の根本的な病態生理を検討することである。水頭症の新生児および乳児を対象としてプロスペクティブ分析を実施した。これらの患児には磁気共鳴画像(MRI)の第一印象として非交通性水頭症の疑いがあったため、手術の前に、シネモードMRIによるCSFダイナミクスCT、脳室・大槽造影検査が行われた。その結果、12名中9名(75%)が交通性と判定され、「交通性水頭症」と診断された。これらの全9例に認められた脳室・大槽造影のパターンから、CSFダイナミクスにおいて、major pathway(主循環路)よりもむしろ実質内優位のCSFの流れminor pathway(副循環路)が明らかにされた。神経内視鏡下脳室開窓術の4名の確定的適応症例で全員の症状が改善されたが、平均5.5週間(範囲:4〜9週間)経過した時点において、ICPの上昇を示す症状が再度全員に発生した。 [本年度研究成果の考察]幼若脳における水頭症に対する治療法である「神経内視鏡下脳室開窓術の無効例」には個体の成熟プロセスにおいて、主要CSF経路が発達していない段階ではminor pathway(副循環路)が重要な役割を果たしているという特異的CSFダイナミクスに依存しているものと思われる。すなわち、動物に認められるminor CSF pathway(副循環路)優位の幼若脳の"Minor Pathway Hydrocephalus"(「副循環路水頭症」)から成熟したヒトの脳に至ってmajor CSF pathway(主循環路)が完成される進化プロセスに基づいて、CSFダイナミクスが発達しているとする「CSF循環動態における進化論」を新たに提唱した。
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