研究概要 |
(1)ラット右膝蓋腱に対して除負荷手術を行い、6週後にその膝蓋腱を摘出し内在性線維芽細胞を分離してそのcDNAライブラリを作成した。除負荷を受けた各細胞において遺伝子発現が亢進しているcDNAをsubtraction hybridization PCR法を用いて解析した。その結果、除負荷という力学的環境の変化は内在性線維芽細胞のMn-SOD,Tyrosinase-related protein,KIAA1199-related protein,KIAA1199,PDGFR-α遺伝子発現を亢進させていることが解った。そこで特に重要な酵素であるMn-SODについて、Western blot、RT-PCR、および免疫染色を用いてin vivoにおけるの発現亢進の有無を調べた結果、この酵素がmRNAおよびタンパクレベルで発現亢進していることを確認した。 (2)家兎右膝蓋腱にin situ凍結解凍処理を行ない、6週後に右膝蓋腱から外来性線維芽細胞(EF)を、左膝蓋腱から内在性線維芽細胞(IF)を単離培養した。第1継代細胞の細胞増殖能についてはMTS法を用いて、Intergrinを始めとする細胞表面の各種のReceptorの発現についてはモノクロナール抗体とFACScan flow cytometerを用いて定量的に解析した。次に単離培養された各種の線維芽細胞をcollagen gelの中に播種し、この中に無細胞腱マトリクスを埋植して培養した。培養された腱マトリクスに対し共焦点レーザー顕微鏡を用いた組織学的評価、および万能試験機を用いた力学的評価を行なった。その結果、(1)増殖能:両細胞ともに細胞数は経時的に有意に増加した。7日目のEFおよびIFの平均細胞数は0日目の8.9倍および21.8倍であり,EFの増殖能はIFのそれより有意に低かった。(2)浸潤能:EFの浸潤能はIFのそれより有意に低かった.(3)腱マトリクスへの浸潤細胞数は、IFでは経時的に有意の増加を示したが(p<0.05)、EFは有意の変化を示さなかった。EF細胞数はそれぞれの時期においてIF細胞数より有意に低値であった(p<0.05)。(4)腱マトリクスのtangent modulusはいずれの細胞浸潤後にも経時的に有意に減少した(p<0.05)。
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