1.軟骨損傷モデルを用いた治療法の開発 1)ヒト変形性関節症の進行期に観察されるようなtide markまでの軟骨欠損を人工的に作成することを試みた。家兎大腿骨遠位部の大腿膝蓋関節面軟骨に径5mmの軟骨欠損を用手的に作成、直後に犠牲死させ、組織学的に欠損がtide markにとどまっていることを確認した。 2)上記の部位に径5mmのtide markまでの欠損と軟骨下骨に到達する欠損の2種類の損傷モデルを作成、それぞれに対しEP2アゴニストを含浸させたPGAゲルを、前者の場合は膝蓋腱下脂肪体に留置、後者の場合は直接、欠損部内に充填した。 3)4週後に犠牲死させ肉眼的及び組織学的検討を行った。軟骨下骨に到達する欠損の場合、表層部に再生軟骨を認めるが、充填したゲルが残存し、骨髄側からの組織修復が阻害されていると考えられた。一方、tide markまでの欠損モデルでは、コントロールでは全く修復組織が観察されなかったのに対し、治療群では添加したEP2アゴニストの容量依存性に周囲よりのII型コラーゲン陽性の軟骨組織の再生が認められた。 以上より、EP2アゴニストの徐放性投与により、関節軟骨の修復が促進されること判明し、今後の治療に向けて有望な結果が得られた 2.間葉系幹細胞におけるEP2発現の意義 不死化骨髄間質由来細胞より100個のクローンを単離、それぞれクローンの分化能とEP2発現との相関を解析した。その結果、軟骨への分化能をもつクローンではほぼ全てのクローンでEP2陽性であったが、骨分化能とは逆相関、すなわちEP2陽性細胞は骨分化能をもたないことが判明し、EP2発現が骨と軟骨への分化能の決定と関連している可能性が示唆された。
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