研究課題/領域番号 |
16390438
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中村 憲正 大阪大学, 医学部研究科, 助手 (50273719)
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研究分担者 |
橋本 淳 大阪大学, 医学部研究科, 助教授 (40237938)
中田 研 大阪大学, 医学部研究科, 講師 (00283747)
名井 陽 大阪大学, 医学部附属病院, 助教授 (10263261)
藤江 祐道 工学院大学, 機械工学科, 教授 (20199300)
吉川 秀樹 大阪大学, 医学部研究科, 教授 (60191558)
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キーワード | 再生医療 / 軟骨再生 / 細胞移植 / scaffold free / 3次元化 / 組織工学 / 接着能 |
研究概要 |
【目的】優れた増殖能と軟骨分化能を有する滑膜細胞を用いた細胞治療システムとして、我々はscaffoldを用いず培養細胞及び細胞自身の産生するmatrixから構成された三次元人工組織(3DST)を開発し、軟骨部分損傷に対する移植により、3DSTの細胞接着因子による接着及び経時的な軟骨分化を認めたことを報告した。本研究では前臨床試験として広範囲な軟骨部分損傷に対する3DST移植実験を行いその有用性を検討した。【方法】8,0x10^6個の豚滑膜細胞をアスコルビン酸添加下に単層培養し、これを浮遊化し自己収縮を誘導し3DSTを作成した。ブタ(12-16週齢)に対し大腿骨内顆荷重部に径8,5mm深さ1,5mmの軟骨部分欠損を作成、3DSTを無縫合で移植した。移植後6ヶ月に組織像及び組織学的scoring(modified ICRS score)にて評価した。また、修復組織に5-10kPaの繰返し荷重を100μm/sで100cycle与える動的圧縮試験により粘弾性を評価した。【結果】3DST移植群(N=8)は全例で欠損部に修復組織による充填を認めたが、対照群(N=4)では軟骨部分欠損は進行し、軟骨下骨の露出を認めた。移植群では組織学的に修復組織は隣接する軟骨組織と連続し良好なintegrationを形成し、広範囲においてSafranin Oに対し強い染色性を示した。組織学的scoringは移植群と比し有意に高値であった。静的圧縮試験では修復組織と正常軟骨は同程度の粘弾性を有していた。【考察】血行を欠き難治性とされる軟骨部分損傷に対し、3DST移植は周辺軟骨との良好なintegrationを伴う修復組織による被覆を認め、円滑な軟骨のresurfacingを獲得した。しかもその修復組織は広範に軟骨様組織への分化を認めた。しかし移植後6ヶ月での修復組織の粘弾性特性は正常軟骨には及ばず、さらに長期の観察が必要と考えられた。動物由来組織や高分子材料などの外来性因子を含まず、軟骨分化能・接着能に富んだ3DSTは難治性の軟骨損傷に対し安全で確実な修復を促す治療技術となる可能性が示唆された。
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