研究概要 |
基礎実験として、我々が樹立したヒト肉腫細胞株TNMY1)および既存の細胞株(Nara H、Nara F、GBS-1)を用い、VEGF受容体に対するinhibitorであるPTK787による、細胞増殖能、浸潤能、血管新生阻害効果を調べた。細胞増殖能についてはMTS assay及びBrdU assayを用いて、細胞浸潤能についてはマトリゲルインベージョンチャンバーを用いて評価した。さらに、血管新生キットを用いてPTK787による血管新生阻害効果を調べた。これらの細胞株はVEGFを発現しており、十分な量を産生していることが分かった。VEGFRも高率で発現していた。VEGF細胞増殖能については、PTK787による細胞増殖抑制効果は認められなかった。細胞浸潤能についてはNara Hのみで抑制効果を認めた。血管新生については4細胞株全てで阻害効果を認めた。次に、apoptosisに関与するデコイレセプターであるDcR3の発現について検討した。骨肉腫cell line 3例(MG 63,KHOS,KTHOS),MFH cell line 4例(TNMY 1,Nara F,Nara H,GBS 1)とともに,生検時に採取した悪性骨軟部腫瘍組織48例(悪性骨腫瘍12例,悪性軟部腫瘍36例),良性骨軟部腫瘍組織24例(良性骨腫瘍11例,良性軟部腫瘍13例)を使用した.これらをRT-PCRを用いてDcR3の発現の有無を調べ,real time PCRで発現量の定量を行った。またcell lineでの蛋白発現をwestern blottingを用いて確認した。その結果は、DcR3はcell lineは7例(100%)で発現し,悪性骨軟部腫瘍組織は45例(93.8%)に発現していた。良性骨軟部腫瘍組織は24例(100%)で発現していた。良性悪性腫瘍での発現率に有意な差はなかった。Real time PCRで定量したDcR3とFasの発現量の比(DcR3/Fas ratio)は,良性腫瘍に比べ悪性腫瘍で高い傾向を認めた。また,高悪性腫瘍は,低悪性腫瘍に比べDcR3/Fas ratioが有意に高かった。DcR3蛋白はcell line全例で確認した。さらに、apoptosisに関与するスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)のGタンパク共役型レセプターであるEDGレセプターの発現を、骨肉腫を含む悪性骨軟部腫瘍組織24例で、RT-PCR法を用いて検討した。結果は、骨肉腫及びMFHはEDG1、EDG3、EDG5が全症例で発現していた。軟骨肉腫ではEDG1は40%、EDG3は60%に発現、EDG5は発現していなかった。脂肪肉腫ではEDG1は71%、EDG3は86%、EDG5は43%に発現していた。低・中間悪性度(軟骨肉腫、脂肪肉腫)と高悪性度(骨肉腫、MFH)での発現を比較すると、EDG1、EDG3、EDG5レセプターすべてにおいて有意差(p<0.05)を認めた。 臨床試験の準備として、臨床試験に使用するAd-OC-TKを株式会社ジーンメディスンジャパン保有の細胞培養センター(CPC)を使用し作成した。
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