研究概要 |
我々は,高さ1メートルの金網のケージ(最上部に給水瓶を設置)を自発的に駆け登るクライミングモデルマウスを開発した。このマウスでは,四肢に荷重が間欠的に負荷され,骨形成が促進することによって骨量が増加し,骨構造が変化する。大腿骨横断面では皮質骨は外側に拡大し骨強度が増加する。このマウスを用いて,骨髄細胞におけるmRNAの発現をreal-timeRT-PCRで解析した。特に,副甲状腺ホルモン/副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTH/PTHrP)受容体,低比重リポ蛋白受容体関連蛋白(LRP)5/6,Wnt/β-cateninシグナル経路を中心に調べた。クライミング運動群では運動をしていない対照群と比較して運動開始後4日目で骨髄細胞中のLRP5,R-cateninのmRNAの発現が増加していた。運動開始後14日目では骨髄細胞中のwnt-1のmRNAの発現が増加していた。PTH受容体(PTHRI)のmRNAの発現はクライミング運動後4日で増加していた。次に,骨髄細胞における脂肪細胞分化について調べた。PPARγ2とC/EBPαの発現に変化はないが,脂肪細胞分化の初期段階で発現するC/EBPβとC/EBPδはクライミング運動後4日で低下し,脂肪細胞分化の後期段階で発現するaP2とPEPCKは運動後7日で低下した。クライミング運動は,LRP5を介したシグナルにより骨芽細胞への分化が促進され,脂肪細胞への分化が抑制されていることを明らかにした。 また,我々は,日本人閉経後女性において,Wnt-l-induced secreted protein l(WISPl)の遺伝子多型と,あるいは,Wntの共役受容体であるLRP5をコードする領域においてアミノ酸変化(Q89R)を引き起こすsingle-nucleotide polymorphism(SNP)と,単純X線像上の脊椎関節症所見(骨棘形成,椎体終板の骨硬化,椎間板の狭小化)に関連性のあることを明らかにした。
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