研究概要 |
1)交感神経による血管透過性と血管新生 血管内皮細胞透過性は、肺水腫発生の大きな要因のひとつであり、私どもの従来の研究結果から神経原性肺水腫発生には交感神経終末に存在するneuropeptide Y(NPY)が肺内血管透過性を亢進させること等を明らかにしてきた。さらに低酸素条件でactin polymerizationを介するものがありAbelson (Abl) tyrosine kinaseが深く関与していることを示した。そこで、NPYにも細胞増殖作用があることを仮説として設定することとした。 ラット大動脈から内皮細胞を分離培養してマイクロプレート上に植えた後、細胞増殖数を調べた。炭酸ガスを5%と固定し、酸素を20%、15%、10%に分けた。播種後1,2,4日経過して細胞数の増加を調べた。薬物投与なし(ND)の結果と比べてNPY10^<-8>Mは、酸素10%の条件で4日後に明らかに顕著な増加が見られた。NPYは20%酸素ではほとんど影響しなかった。このような低酸素状態における内皮細胞増殖作用はNPY Y_310^<-8>Mでは見られなかった。併せて、NPY Y_3-受容体拮抗薬NPY(18-36)はNPYの細胞増殖作用を抑制することから、低酸素状況でみられるNPYの血管内皮細胞増殖作用はNPY Y_3-受容体を介するものであることがわかった。 2)NPYのY_3受容体との結合(活性)部位 NPY Y_3-受容体のクローニングはまだ成功していない。そこでラット大動脈内皮細胞の単層の透過性でNPY分子上の活性部位を明らかにすることとした。既にラット大動脈内皮細胞の単層の透過性に対するNPYの増強作用がNPY Y_3-受容体を介するものであることから、その判定手段としてNPY(18-36)というY_3-受容体拮抗薬で拮抗できることを条件として判定することとした。まず、NPYの17番目の位置にSH基を持つmethioninに着目してNPY(1-16),NPY(17-36)の作用を検討した結果、NPY(1-16)にはNPYそのものと同等のefficacyが見られ、NPY(17-36)はNPY(18-36)と同様にNPYの作用に対する拮抗作用とY_3-受容体のパーシャルアゴニストとしての作用が見られた。そこで、NPY(1-16)をさらに細かく刻んで4種類のペプチドの作用を現在調べている。
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